コンクリートを腐蝕させるものと事柄


     コンクリートを腐蝕させる代表的物質はです。 

コンクリートは、砂と砂利と砕石をポルトランドセメントで結合した塊です。
そのポルトランドセメント石灰岩(炭酸カルシウム)と粘土等の鉱物を一緒に高温で焼いて、粉に砕いて作られますから、カルシウムを含む種々の無機塩類の混成体になります。
これに水が混ざると、それら鉱物由来の無機塩類がゴチャ混ぜになって水と化学結合(水和)して“複合カルシウム塩水和物”とでも言うべき固体になります。
       それらの固体は、(日常的感覚では)水に溶けません。
        だから、安心してコンクリートの家に住めるわけです。

・・ところが・・この“水に溶けない”複合カルシウム塩は、(硫酸カルシウムを例外として)「大抵の素早く反応して、別の水溶性に変る、」という性質を持っています。
それ故、コンクリートがの水溶液に浸かると、この反応と溶出が起って、スカスカになります。   それが“酸による腐蝕”です。

そんな高速の分り易い腐蝕以外に・・に、コンクリートには、ある種の塩類、多価アルコール類、糖類等による極めてゆっくりとした機構がよく分らない腐蝕もあります。
 水中のコンクリートは多分、水への(微量の)溶解と析出がバランスした平衡状態で安定しているのだと思われますが、糖類等はこの析出反応を妨害するのかもしれません。

ともかく・・実際に、腐蝕現場のコンクリートを観察すると、コンクリートの腐蝕には、少なくとも2種類の形態があるように感じます。
つまり、硫酸カルシウムスラリー槽等は、確かにコンクリートはグリ石が出るくらい腐食するのですが、残った表面緻密で硬く、外観上、劣化していません
一方、例えば工場の廃酸ピットや、熱海や伊東といった硫黄分が多い温泉地の密封型下水貯留槽等は、時として、ドライバーを突っ込むと根元まで入るくらい深く軟弱化しています。 
  だから、コンクリートには多分、複数の別々の腐蝕機構があるのでしょう。

 こういった腐蝕のし方は・・ 【槽内の位置の差異によって変わることがあります】
何も塗装されていないコンクリート製廃液槽で、よく見られるのは、上にゆく程腐蝕がひどくなる、というパターンであり、大抵、気相部の腐蝕が、最悪です。
これは、ガス体による腐蝕と思われ、H2S、NH3などが原因物質として疑われます。
液相部の上下差は、酸素濃度が関係しているのかもしれません。
このように、「同一の構造体」でも、部分部分は「別々の」腐蝕をするのが普通です。
     腐蝕には、“腐蝕性物質の有無”以外の色々な要素も関与するからです。

    ・・コンクリートの“内部空隙”もそういった要素の一つです。・・
・・(幾つかの理由により)・・コンクリートには必ず無数の微細な空隙が出来ます。
 後述するように・・この“空隙” も、コンクリートの腐蝕のし方を左右しています。

ちなみに、水中のコンクリートではこの空隙に水酸化カルシウムを溶かした遊離水・・というか・・遊離水に溶け込んだ水酸化カルシウムというか・・(これが強アルカリ性をもたらす主体)が詰まっています。これは上記の複合カルシウム塩の微細な隙間を“うろついて”いるだけですから、周囲の水に溶けて居なくなっても、強度には影響しません
(“コンクリートはアルカリ度が下がれば強度が落ちる”・・と誤解なさっている方もいらっしゃるようですが、 コンクリート強度は、
空隙率の大小に左右されるのであり、アルカリの強弱とは無関係です。)
(余談ですが・・養魚水槽を作った時は、コレが溶け出すと、“魚が死ぬ”という問題が生じるので、溶出量が少なくなるまで“アク抜き”と称して長期間放置します。 更に余談ですが・・表面に塗装をすれば、アクの溶出は防げます。)


・・ということで・・“全部チャンと分ってるわけじゃ無い”が・・という但し書きを付けて、以下に、廃水、下水雨水に晒されるコンクリートを劣化もしくは変化させる代表的物質名を挙げます。






                 *硫化水素

硫化水素そのものは、コンクリートに対する腐蝕性は(多分)ありません。
しかし、H2Sは、O2とH2Oの存在下で、強酸のH2SO4、あるいは、H2SO3に変化し、これらは(強酸ですから)、コンクリートに対し、何れも強い腐蝕性を持ちます。
硫化水素から硫酸への変化は、直接酸化とバクテリアが介在した酸化の二つのルートがあります。
この例に限らず、生物と共存する構造体は、しばしば“生物が絡んだ”劣化をします。

            *アンモニア及びアンモニウム塩

ほとんど全てのアンモニウム塩は、コンクリートを腐蝕します。
アンモニウム塩は、アルカリ性雰囲気(例えばコンクリート表面やコンクリート中など)で、H+を発生し、酸と同じ作用をするから・・だそうです。

                  *動物性脂肪

鹸化反応によって、カルシウム塩とアルコール類を生成しながら、セメントを侵食します。この酸化物も酸性物質となってコンクリートを腐蝕します。

          *バクテリアや藻類の分泌物あるいは分解物

生物が生育にともなって生産するある種の物質は、例えば、有機酸のようにコンクリートを腐蝕します。 あるいは、この生産物の酸化物による腐蝕もあります。

                 *環境汚染物質

化石燃料を燃やすと、大量の窒素酸化物、硫黄酸化物が空気中に放出されます。
これらが雨に溶けると、酸性雨になります。 
それは下水にも流入してきますので、
コンクリートを腐蝕します。

                  *炭酸ガス 
    (*空気中に0.03%含まれます。水に溶けると“炭酸”という弱い酸になります。)

炭酸ガスも、一応(弱)酸性物質ですから、コンクリートのアルカリ成分と中和反応をして、
これを中性化します・・が・・この反応は、“遊離の水酸化カルシウム”炭酸カルシウムというコンクリート構成成分に変えるだけですから、コンクリート自体には何のダメージも与えません。 それどころか、(それによって空隙率が下る分、)強度は上ります。
 つまり、炭酸ガスによる中性化”は、腐蝕でも劣化でもありません
   ・・だから、“この”中性化度は、コンクリート劣化の指標にはなりません・・

それに対し、塩酸や有機酸のような(炭酸よりは強い)強酸類は、勿論、遊離水酸化カルシウムを中和しますが、それに止まらず“炭酸カルシウムや珪酸カルシウム等のセメント構造体”アタックして、内部構造の破壊と成分溶出をもたらしますから、立派な腐蝕性物質です。
(構造体成分が溶出すれば、内部空隙が増えるので、強度が下がります。)
 だから、“こちらの”中性化度なら、コンクリート劣化の指標たり得ます

そういう事情を考えると・・フェノールフタレン液を塗ってPHを調べ、その下がり具合を劣化の指標にする・・という(広く行われている)“コンクリート劣化検査法”は、本当に劣化の検査になっているのかどうか、疑問です。 
・・だから、そんな回りくどい間接的なやり方より、シュミットハンマーで一撃して直接固さを調べる方が、より合理的です。
(もっとも、この方法も、硬さは分っても、それが“元々そういう数値だったのか?” それとも、“劣化した結果”そういう数値になったのか?は分りませんので、最終的には、“目視”と併用して、“常識”判断するしかありません。 )
・・常識的に言えば・・普通は・・(専門家?のように薬品や機器を使わなくても・・)・・腐蝕してるかどうかは“見れば”分ります・・

     ・・最近中性化が問題視されていますが・・
コンクリートの中性化が問題とされる所以は、PHが下ると鉄筋の不動態状態が壊れて、錆びる可能性が出てくるからですが、それはあくまで、鉄筋腐蝕の問題であり、コンクリートの腐蝕とは無関係の、独立した問題です。 
“鉄筋コンクリート”という両者が複合したテーマであっても、両者の腐蝕原因や腐蝕機構は異なるので、対策は別々に考え、それを合理的に統合する・・という対処法が良いと思います。



            *その他、様々な流入物質、原因物質

下水には、現代生活で使用される様々な物質が流入してきます。
これらの中には、(例えば、タイル洗いの塩酸や漂白剤等)それぞれ量的にはたいしたことなくても、コンクリートを劣化させるようなものが、数多く存在します。
 多分、その他にも、気が付かない腐蝕要因が、沢山有ることでしょう。


                *水 

水は腐蝕性物質ではありませんが、水を流しブラシでこするだけでも、(気が付かないほど ゆっくりと確実に)コンクリートは磨り減ってゆきます。  
(・・磨耗とともに、コンクリートには、微量ながら水への溶解という現象があるからです・・つまり炭酸カルシウムや水酸化カルシウム等のセメント成分の溶出です)
緻密でない物ほど磨耗と溶失がより短期間で進みます。



          
 *水の内部移動(と乾湿繰り返し)
              (・・これはモノではありませんが・・)

・・水みちや、乾湿が繰り返される部分集中的に腐蝕する現象があります・・  
                  
・・そのメカニズム・・

    コンクリート中のセメント分は、「酸を中和する」働きをもっています。
  だから、酸に晒された時は、
表面が犠牲となって内部を保護する形になります。
  (コンクリートの腐蝕メカニズムを考えるときは、それを、忘れないで下さい。)

さて、(極端に表現すると、)コンクリートは
細孔だらけのスカスカの透水性材料であり、微量ながら、水も空気も自由に出入り出来ます
その細孔内部で何が起るか・・
ストーリーはこうなります・・ 細孔に浸透してきた酸(を含む水)はたちまち中和され、腐食性を失いますその水がそこに留まるかぎり、新しい酸は浸入してこれません。(厳密には、拡散現象によって、微量のゆっくりとした浸入が続きますが・・)
だから、その状態が保持される限り、内部の腐蝕は殆んど進行しません。

しかし、もし、
この水が何処かに行ってしまったら・・・そこに、新たな酸が浸入するスペースが出来ます。
つまり、乾湿繰り返しは、腐食性の液を、細孔内部に呼び込む働きをするため、腐蝕が促進されます。

このように、水(や腐食性物質)が浸入する場所や、それが透過する通路は全てコンクリートの内部空隙です。 そしてまた、腐蝕や化学反応が起る場所も内部空隙です。
                    だから・・
コンクリートの内部空隙が増えると、腐蝕は早くなります

     (逆に・・
内部空隙が減れば、腐蝕は遅くなります。)

ちなみに・・コンクリートを練る水を増やせば空隙は増えますから最近のポンプ打ちコンクリートのように多量の水を使う方式は・・水の使用量が少なかった昔の固練り突き固め方式より内部空隙が増えます。 ・・よって、次の結論が導かれます・・
今の現場打ちコンクリートは昔のものより劣化が早い!
 

          ・・
みず道が腐蝕し易いのは・・
  新たな水が供給され続け、
それによって成分が溶出し続けるのが原因です。
  (だから、水の入り口を放置して、
出口を塞いでも、腐蝕の進行は止まります。)



          追加項目・・*水の凍結(寒い地方の皆様はご注意下さい。)

  水は、結晶化すると“体積が増える”という“変った性質”を持っています。
 だから、コンクリート(の細孔)に水を滲みこませて凍結させると、⇒膨張圧で周囲を破壊します。
例えば・・液化窒素ガス(−60℃)を使って瞬間冷凍食品を作っている工場ラインの床コンクリートや、冷凍冷蔵庫の床は、「キチンと防水措置をしていないと」表面からグチャグチャになって崩れてきます。“凍結しっぱなし”なら、大した被害は無いのですが、凍結融解を繰り返えすと、(押したり戻したりが繰り返えされるので、)被害は大きくなります。
但し・・「コンクリートの中に常在する遊離水」・・にビクビクする必要はありません。
そういう、内部の“非常に微細な”間隙に閉じ込められた水は「少々の低温では凍りません。」
(理由の説明は、長くなるので省きます。)
     ・・だから、問題なのは・・大きな間隙に溜まっている水」だけです。
 
だから・・極寒地方では・・もし、コンクリート表面にひび割れや空隙を見つけたら⇒すぐに防水を被せるか、「適当な物(^^)を流し込んで水が入らないように」する必要があります。



             (* アルカリ骨材反応)

これはコンクリート中の骨材である砕石や砂利や砂が多少ややこしい経緯を経て、水を吸って膨らんでコンクリートを割る現象です。
石が水を吸って膨らむ?・・ンなアホナ・・とお思いでしょうが・・ “ややこしい経緯” という語にご注目されたし。  まず石が溶ける話から・・石は水に溶けます。
石の主成分であるシリカの溶解は日常の時間感覚とは桁外れにゆっくりと進行し、溶解量もチョー微々たるものですから、グラスの水にガラスが溶けているとは誰も感じないでしょうが、溶けているのは事実です。
結晶の構造が乱れている方が溶け易くなります。
ちなみに、アマゾン河口にあるとかの硅石鉱床は、上流から
溶解して運ばれてきたシリカが、数億年という地質学的時間によって沈殿堆積して出来たものだそうです。
身近?な例では、化石の一種である
硅化木も、そういうメカニズムで出来たそうです。
(といっても、誰か、1億年かけて、実験して確かめたわけではないようです。)
さて、
苛性ソーダは(日常的時間で)ガラスを侵しますが、これは微かな酸性物質であるシリカと強アルカリの苛性ソーダが中和反応してシリカより遥かに水に溶け易い硅酸ソーダに変るからです。
このように、
強アルカリ物質の共存はシリカの溶出を(大幅に)助長します
       (ちなみに、コンクリートは強アルカリ物質です。)
溶出したシリカは周囲のCaイオンや、(海砂等に混じっているNaイオン)とくっついて、ゴチャゴチャとした経緯で最終的には水を吸って膨らみます。

余談ですが、
水ガラスは硅砂と苛性ソーダを融混合して作ります。
これは、
化学屋がやる“元祖”アルカリ骨材反応であり、製品である珪酸ソーダは、水を吸うだけでなく、完全に水に溶けます。(その時、勿論、体積が増えます。)
ついでに言えば乾燥剤のシリカゲルは、その水溶液に酸を加えて沈殿させた多孔質シリカです。

この沈殿反応は、光触媒反応を阻止する目的で、塗料の白色顔料である酸化チタンの表面にシリカを被覆するのにも使われます。だから、アルコツ反応の主役の親類は、身の回りの塗料の殆んど全てに入っています。

ところで、自然の岩石の大半はシリカが主成分であり、これに様々な無機酸化物が結合あるいは混在した物です。結合物が例えばナトリウム等のアルカリ金属酸化物であると当然
水ガラス的性質が増し、それだけ水に溶け易くなります。
つまり、
そういう種類の岩石を骨材に使うと、それがコンクリート内部の強アルカリ雰囲気に助長されて、たった5年10年あるいは数十年といった程度の“極めて短い時間で”水に溶け、ゲル化し、水を吸って膨らみ、頭書のトラブルを起します。
         アルカリ骨材反応というのは、そういう反応です。



大よそ、こういった物や事柄が、雨水・廃水に関わるコンクリート腐蝕の原因です




                    
対策は??

アルカリ骨材反応のようにコンクリート内部に劣化原因を抱えてしまった物や、酸等によって腐蝕された部分に関しては、今のところ、そういう部分を除去して健全なコンクリートを打ち直す以外、根本的な修理法は有りません。 
・・が、アルカリ骨材反応はメカニズム的には、“水の供給がなければ進行しません”ので、被覆防蝕や防水措置を施せば、進行を阻止あるいは遅延できます。    
         腐蝕も、同様の手段で
それ以上の悪化は防げます。

             ・・・要は、
「放置しないこと」です。・・・


       50年100年200年という時間レンジで耐久性を考えるのなら・・

   
そういう弱点を持っているコンクリートを、裸で下水や汚水や風雨に晒すな”・・

                  ・・という事です。


    上記の諸々の理由により・・具体的な腐蝕劣化予防法としては・・
        
 (株)ソテックの塗料を塗れ!(^^)・・とは言いません・・が・・・
   “何か
適当な防蝕被覆をすること” お勧めします。 

最近なんか急に、○○の腐蝕機構がどうの△△の劣化メカニズムがこうの☆☆の論文がどうの外国の文献がこうの□□省の規格がどうのと、・・一見学術的な、難解な(^^:)土木屋さんの土木屋さんによる土木屋さんのための“コンクリート腐蝕防蝕理論?”がこねくりまわされていますが・・専門家?を過大評価する条件反射はやめましょう。「コンクリート防蝕には難解な専門知識が要る?!」わけでも「素人では防蝕出来ない?」・・わけでもありません。 
(“猫が転んだ”という要約内容で、難解な学術論文を四つ書けるプロ学者も居る・・というです。)
      ・・・世間の片隅では・・・あのての学術(風)論文は・・
 自分達の“工法”を権威づけるためのガマの油の売口上・じゃないのか?
  ・・・という陰口も囁かれてるくらいです。  
囁いてるのはお前だろっ!・・って・・ (^^;)

ともかく・・たかが、屋外や排水や下水のコンクリート防蝕ごときに、そんなご大層な偏った理論や論文を振回わさずとも、・・アスファルトでもエポキシ塗料でも何でもいいから、“耐アルカリ性の、”“水に溶けない”適当な塗る滲みこませて「腐食性物質通路である細孔塞いでしまえば、」何もやらんよりは“格段に”長持ちします。 ・・本当です・・(防蝕業界では遥か昔から経験済みの分野です。)

そして・・何を塗るか?」さほど大した問題ではありません。・・それよりも・・
長持ちさせるためには
・・チャンとやるかどうか」の方が大事です。

     チャンとしたやり方とは?・・それは、このHPの最初に載せてあります。



用語説明
SiO2はシリコンオキサイド(酸化硅素)というのが正式名ですが、元素名の語尾にアを付けて“酸化物”を表現するという形式の通称があります。
シリカ、アルミナ(酸化アルミ)、チタニア(酸化チタン)、マグネシア(酸化マグネシウム)、・・等、全部同じパターンの名前
ソーダはナトリウムの通称。


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