水蒸気拡散

ズシンと重い発泡スチロールを見たことがありますか?


作り方
発泡スチロールの箱に、水を入れます。
サーモスタット付きの投げ込みヒーターを入れ、90℃近辺にセットして、水が蒸発しないようにフタをします。
これでヒーターのスイッチを入れて、そのままじっと一ヶ月待ってください。
(蒸発する水は、時々補給してください。)

これで、ギネスもんの重さの発泡スチロール箱の完成です。

ちなみに、これは単に重いだけではなく、火を付けても、なかなか燃えません。
スチロールを“パカッ”と割っても水は出てきません。手品のように、どこかに水が隠れているのです。
Q:なぜ、こんなことになるのか?
A:水蒸気拡散の結果です。

お勉強(1)で説明したように、プラスチックは多かれ少なかれ化学物質を透過させます。一般的に、小さな分子ほど、透過力は大きくなります。そして水の場合(というより、なんでも)温度が上がるほど透過力が増します
そして、僅かずつですが、透過したものが蓄積すると、こういう状態が出来上がります。


発泡スチロール断面

温水

透過する

外を冷やして内外の温度勾配を大きくすると 拡散スピードが上がります
なお、この現象は内面に樹脂ライニングを施しても起ります。(阻止は至難です)
ただし、膜の材質や内部構造によって、遮断性能は変ります。
・・ということで、実は、これは、ライニング膜の遮断性能を調べる、ソテック式テストなのでした。
・・・なお、言葉につられて拡散するのは水蒸気だけだ、と思わないように・・・ 
水を含めて、あらゆる液体と気体が、こういう現象をおこします。

(発泡硝子や抗火石のような無機発泡体では、こういう現象は起きません)

                      余談1
コンクリート製蓄熱槽の内面に発泡ウレタンを吹き付けて、その上にウレタンやエポキシの防水塗装をした、お粗末設計の見本のような、安直な)保温仕様を見かけますが・・お湯を入れて2年も経つと・・ズッシリと重い、(断熱性の無い)断熱材?が出来上がります。
・・・そのトラブルの主因は水蒸気拡散です。

ある地方自治体の蓄熱槽が、短期間で全部、こういう状態になり、“施工業者に原因と対策を問い合わせたけど、何の返事も来ない。”と、担当者が困っていたそうです。
株川アHPのリアルな実物写真参照某有名業者の作品の数年後の状態だそうです。

  トラブル発生率は、業者の能力を計るいい指標ですが、施工実績表に、クレーム実績を載せる業者は、いま    せんから、実績表は必ずしも技術力の指標にはなりません。
  後でトラブルで悩まないためには、発注する側も、多少の技術知識は持っておいた方がいいでしょう。
         

ある上場企業が、新製品の保温材を販売し始めましたが、その技術担当の知人に、
“対象を考えて売らないと、後でクレーム処理でゲソッと瘠せますよ。・・・3年後が楽しみ(^^)”・・と、この話をしたら、“ゲッ、そんな現象があるの?”と、うろたえていました。
時間をかけてユックリと進む現象は、今、目の前で起っていても気付き難いものです。・・人の老化や腐蝕や水蒸気拡散は、そういう現象の典型かもしれません。


                    余談2 
建築業界で建物の断熱は内断熱にすべきか外断熱が良いか・・という論争があるようですが、内外の温度差が大きい寒冷地で断熱材の吸水を抑えたければ外断熱が有利に決ってます。(内断熱をやると上記のウレタンと同じになります)(冷房する場合は・・内断熱でも問題ありません。)(無機発泡体で断熱するなら、内外どちらでも同じです。)要するに家屋の断熱であれ水槽の断熱であれ、そこに働く自然現象は同じです。

                    余談3 
   鋼管や鋼製タンクを外断熱で保冷すると・・・断熱材は徐々に吸水します。
   (隙間だらけの、防水板金では、この吸水は防げません。)
 その結果、管表面には必ず結露が生じ、(酸素が多い分だけ、)水中より劣悪な腐蝕 環境になります。
           だから、保冷タンクや保冷配管には、
 そういう状況を想定した防蝕被覆をしておかないと、ボロボロに錆びます

     (保温タンクの場合は、深刻に考える必要はありません。・・理由は、わかりますね?)


        用語の目次へ戻る     トップページへ戻る