塗膜欠陥・検査・修理


防蝕被覆に必要な性質は、接着安定性と耐蝕性と環境遮断性です。(お勉強1:参照)
  だから、(防蝕被覆としての)塗膜欠陥というのは、それらを損ねる事柄のことです。
              
 (往々にして塗膜欠陥とされる色むら、ゴミの付着等は、“防蝕機能とは無関係の事柄であり、その意味では、欠陥ではありません”。 それらは防蝕とは別のテーマに属する問題です。
       
 

           T、耐蝕性を損ねる事柄

T−1:硬化不良

硬化不良の原因は、
@配合ミス
A混合不良
B硬化阻害物質の混入
C樹脂原料の変質
です。(他は、多分ありません。)

硬化反応に異状があると、(架橋が不十分になるため)硬度が低くなり、耐溶剤性も上がってきません

もちろん、全ての物性が変わるのですが、この二つが最も分りやすい項目であるため、硬化不良かどうかは、このどちらか(あるいは両方)を、“正常”と比較して 判断します。

《検査法》

具体的には
○指や爪で押さえてみて、硬さの感触を確かめる“指触検査”
○アセトンをしみ込ませたウエスを何秒か塗膜に押し付けた後、爪で塗膜をこすって膨潤の度合をチェックする“ケトン検査”で、行います。(アセトンでないといけないという理由はありません。その材料に応じた物を適宜選べばOKです。)


どちらも、感応検査であるため、慣れが必要です

混合不良の場合・・・硬化の程度が狭い範囲でバラつくという特徴があります。

阻害物質の混入の場合・・・変色などを伴うことがあります。


T−2:硬化不足

樹脂はキチンと硬化する為の時間(養生時間)が必要です。
短い日数や低温では硬化が不十分の“状態”にあります。

これは、外見上は、“硬化不良”と似ていますが、塗膜欠陥ではありません
今の状態が“硬化不良”なのか、“硬化不足”なのかは、時間と温度を勘案して、硬化の度合いの“時間的変化”が“正常”かどうかで判断します。
(従って、この判断も“正常が分っていないと”できません。)

このように、硬化状態の検査は、未経験者には最も分りにくい検査ですが、“正常なものがキチンと硬化すればその樹脂固有の一定の硬度に達する”という原理を使って、“硬度検査”をして、硬化不良をチェックする方法もあります。

持ち運びに便利なバーコル硬度計を使います。

これはまた、“硬化養生が終了したかどうか
のチェックにも使います。

硬化の呈度を数字で表現できるのが長所です。
この方法の欠点は、施工後日数が経って硬化がある水準まで進まないと使えないことであり、施工中のリアルタイムの品質管理に使うのは不便です。
もう一つ、これは一定の圧力で樹脂に測定針を突き刺して、その浸入深さを測るという測定法ですから、その針の先がFRPのグラスファイバーやフレークライニングのガラスフレークやレジンモルタルの砂等の充填材に触れると大きな数字が表示されてしまいます。測定には、その注意が必要です。また、力のかけ方で多少数値がばらつきます。 

なお、硬化不良や硬化不足の樹脂は、その樹脂本来の性能がだせません。 
耐蝕性も環境遮断性も悪くなるので、水や環境物質が、樹脂中に容易に浸入します
キチンと硬化しないうちに(硬化不足の状態で)ライニングを使ってはならない
というのは、そういう理由があるからです。


           U、環境遮断性を損ねる事柄

@膜厚不足
A気泡
B含浸不良
Cピンホール
D異物混入
E硬化不良

硬化については、前項で説明したので省きます。
その他の事柄は全て“膜厚不足”という視点でまとめることができます。

(グラスファイバーへの)含浸不良          気泡










       異物混入           クレータリングやクローリング   ピンホール

図のように、気泡や含浸不良はその分だけ“膜厚不足”とみなすことができます。
ピンホールはピンポイントの膜厚ゼロ部、クレータリングやクローリング(はじき)は、ピンポイントの膜厚不足部というわけです。
膜厚が減ると、遮断性能が低下します。(お勉強1:参照)
ただし、このうち異物混入だけは、必ずしも膜欠陥とは言えない・・・という一面があります。どういう大きさの、何が、どんな形で混入するかによって、悪影響の度合いが変わり、場合によっては悪影響は無いからです。
(ただし、そうは言っても、現実問題としては、できるだけ入らないように管理するのがスジというものです。)


《検査法》
感応検査と膜厚検査とピンホールテスト(ホリデーテスト)でチェックします。

@感応検査
見たり、触ったり・・・五感による検査であり、目視検査ともいいます。
含浸不良や気泡、異物、その他いろいろな欠陥が目視によって見つけられます。
(また、何がどこにどんな状態であったか・・・を見ることによって、無数の“見えないことも見えてきます。 こういった項目は検査機器では検査出来ません。)

ライニング材を着色してしまうと、気泡や含浸不良や異物混入などの内部のことは見えなくなります。

(ただし、ひどいものだけは、表面の微細なふくらみ方や触ったときの音等によって検出することは可能です。・・・それも慣れればの話ですが。
だから、本当に重要な設備を防蝕するときは、防蝕材は着色しないのが原則です。
どうしても着色したいときは、全検査とタッチアップが終わったあとでトップコートだけで着色します。)

A膜厚検査
専用の膜厚計で点点点と計っていきます。








  各種膜厚計
 磁石型、電磁誘導型、渦電流型、超音波型、等 下地別に使い分けます。

ピンホールテスト(ホリデーテスト)


              ホリデーディテクター(ピンホールテスター)

高圧のパルス放電等をかけると、ピンホール部や膜の薄い所、ゴミを巻き込んだ薄い箇所等の部分で放電の火花が飛びます。
こういう部分をひっくるめて、英語で“ホリデー”と言いますので、このタイプの検出機は、(厳密に言えば)ホリデーディテクターと言います。
 
 

          V、 接着安定性を損ねる事柄

 接着安定性を損ねる事柄は沢山ありますが、施工後に、全体的に接着状態を検査したり修理したりする方法は在りません。(だからこの検査は、接着不良の発生を予防する、という見地に立ってやらないと無意味です。)

塗布前の下地処理の検査施工中の下地状態の検査が最も大切です。 
 
 防蝕ライニングにおける接着の考え方、検査の視点などは“下地処理は何のためにやるのか”“相間剥離”“剥れと界面応力”等の接着関連のページを参照して下さい。
 

《数値主義に陥ってはいけません。検査の目的を忘れてはいけません。》

膜厚や接着強度やピンホールテストは1200μmとか50Kg/Cuとか300Vといった具合に数字が入ります。「数字が入ってさえいたら安心する」向きもありますが、科学的=数字で表現出来る というものではありませんし、数字で表現したら科学的になるというものでもありません。
数字の意味を理解しないと無意味であるばかりか、有害ですらあります。
また、防蝕ライニングでは、数値化出来ない多くの事象が耐久性を左右するので、数値化出来る物だけの検査で事足れりとするわけにはいきません。
   (どちらかと言えば、目視等の感応検査の方が、遥かに重要です。

例えば膜厚は場所場所でバラつきます。そういうものをどう数値化したらいいのか?
その答はそのライニングにおいて膜厚がどんな意味をもっているのかによって変わります。
平均値の設定なのか、最低値の設定なのか、最高値の制限なのか、バラつきそのものの制限なのか、よくよく検討する必要があります。
また、サンプリングのしかたも、本当は「要所」があります。「問題が出易い箇所」を重点的にやる方がキチンとした検査になります。(そういう判断は数値化出来ません。)
ピンホール検査もブラシの移動スピードやこすり方で検出確率が変りますし、天候によっても左右されます。また、出やすい箇所と出にくい箇所もありますので、そういう事をふまえて何処に力点を置くか考えないといけませんが、そういう判断も数値化は出来ません。

   ライニング検査というのは悪い部分を見つけるのが目的です。

その意味でピンホール検査は全面やるべきです。(抜き取り検査はナンセンスです。)
接着力も、本当は全面やるべき項目ですが、今のところ、技術的にその方法がありません。だから、その代りとして、(上記に説明したように、)それを左右する事象を検査するわけです。
(だから、某役所の技術指針のように、施工が終ってから、抜き取った箇所が所定の接着力をもっているかどうか確認したって、今更直しようが無いので、実用上は無意味です。 )


《修理の考え方》
膜厚不足のエリアは塗り足せば解決します。
ピンホールやエアホールは全て、根こそぎ削り取って継ぎ足します。 
修理は何であれ、中途半端なことをしない、という事が肝要です。










修理で一番注意すべきことは、 

継ぎ足した樹脂と元の樹脂をキチンと接着して完全に一体化させることです。
そうでないと、またそこから剥れます。
層間剥離・・・参照)

トップページへ戻る