施工環境はライニングの設計、施工にどんな影響を与えるか

【低温】

1:硬化速度

どんな樹脂も、低温になると硬化速度が遅くなり、その樹脂固有の、ある限度を超えると、硬化反応が止まってしまいます。
 
硬化促進剤を併用すれば、ある程度リカバリーできますが、それも限界があります。
 
例えば、一般的なエポキシ樹脂は、10℃位から急に反応性が低くなり、0℃位で固まらなくなります。(特殊なタイプでも、せいぜいマイナス5℃位です。)
 
ウレタンや不飽和ポリエステルやビニルエステルは、あと10℃位低いところに限界があり、MMAは、最も低いところに限界温度があります。
 
だから施工温度が低いときは、その低温で支障なく硬化する材料を選ばないといけません

2:粘度

どんな樹脂も、温度の低下に伴って粘度が上昇します。
 
粘度上昇は作業性を低下させるため、たいていの樹脂の“冬用”は、(例えば、エポキシでは、反応性希釈材を増量したり、不飽和ポリエステルやビニルエステルなら、スチレンモノマーを増やしたりして) 粘度を下げてありますが、そういった措置は、ほとんどの場合、硬化物の諸物性を低下させます
 
もう一つ、低温で固めた樹脂は、高温で固めたものより、架橋密度が低くなるので、耐溶剤性 環境遮断性 耐薬品性 などが低くなります
 
よって、冬に施工した樹脂ライニングの物性は、夏のものより悪い、というのが 一般的結論です。

また、、苦し紛れに、現場作業員が、樹脂に 稀釈剤やシンナーを混和して、作業性を勝手にどんどん“改善”してしまう、(^^;)という隠れた危険性もないわけではありません。
 
   温度低下⇒高粘度化・・という現象は、そういう問題と背中合わせになっています。
 
   もう一つ、極低温の施工では、施工面上に氷の膜が出来ているケースがあります。

   その上にライニングをしないよう 注意してください。

必ず剥がれます
 
硬化促進のため、加熱をするなら、“界面応力がどうなるか”ということにも留意が必要です。

結論

それやこれやで、真冬の施工はできれば避けましょう。
良いことは殆んど有りません。

【高温】

1:硬化速度

硬化は当然、早くなりますが、樹脂の物性に対する悪影響はまったくありません
 
ただ、40℃を超えるような高温になると、エポキシ系やウレタン系は、反応が短期間で進みすぎることによる 層間剥離 の危険性が高くなります。

2:現場作業

樹脂のポットライフが短くなるので、作業は忙しくなります。
 
結論
 
層間剥離以外は、特に問題はありません。

【高湿度】

一般的に、施工時の湿度そのものが樹脂の物性に悪影響を生ぜしめることはありません
 
しかし、結露によって出来る遊離水は、大抵の場合、色々な悪影響を及ぼします。
 
   その、水の混入による物性低下の程度は、個々の材料によって 大きな違いがあります。

【密閉空間】

溶剤型塗料、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、MMA、フランなどは、ガスと悪臭を発生させますので、安全上の配慮と、臭気対策が要ります。
 
無溶剤のエポキシ系、ウレタン系、ポリウレア系 等を使えば、この問題は避けられます。

【直射日光】

紫外線(UV)による劣化が問題になります。
 
一般的な耐蝕性樹脂は、(エポキシ、ビニルエステル、ビス系不飽和ポリエステル、MDI硬化ウレタンなど) ほとんど全部といっていい位、ベンゼン骨格をもっており、この構造は、分子を切断するほど 強大なエネルギーを持つUVを、効率良く吸収します。
 
つまり、耐蝕性が良いライニング材が、UVに弱いというのは、一般則みたいなものです。
 
そういう状況では、充填材に工夫をするとか、UV遮断用のトップコートを被せるといった処置が要ることがあります。

【作業員の技能水準】

しばしば、防蝕ライニングの寿命を決める最も大きな要因は、作業員の技能です。
    どんな仕事でも、慣れるまで はうまく出来ないものです。
 
樹脂ライニングの すべての技法をこなせる職人は、多分世界中探しても いません。
そして、それらの技法の中には、習得に多少時間がかかるものや、“生まれつき” みたいな作業センスを要求されるものも 有りますので、そういった“現場の技能” も読み込んで 設計しないと、技量未熟で とんでもないものが 出来上がる事があります。
 
現地作業員で施工する様な 海外プラントなどの設計では、重要な要素です。

【修理システム】

あらゆる物事にトラブルは付きものですから、どんな設計をするにしても、ある程度、トラブルを予測して、リカバリーの方法を“キチンと” 作っておかないといけません。
 
(ユーザー側から見て)
        ●修理しやすい仕様
        ●入手しやすい材料
        ●熟練を要しない工法
           を用意しておくべきです。
この視点が抜けていると、施工中あるいは、施工後、手の打ちようがない、お手上げ状態になることがあります。

【脆弱な下地】

劣化が進んだコンクリートや、材齢が経っていないコンクリートや、錆の上など、脆弱な表面にライニングするときは、接着界面に大きなストレスが掛からないような仕様でないと、すぐ剥がれます。

【雨・風・嵐】

風が強いところでは、ガラスクロスやサーフェーシングマットは貼れませんし、雨が降りやすい状況で、水ですぐ硬化不良になる樹脂を選ぶのは、トラブルの種蒔きをしている様なものです。

【たまねぎとアンパン】

密閉空間の項で触れたような、ガスや悪臭を発生させる材料は、周囲の物を 着臭 させることがあります。 そういう状況では、無臭の材料を 選ぶべきです。
 
食品工場を、不飽和ポリエステルで防蝕して、近くに保管してあった“アンパン”を 着臭させてしまい、トラック一台分を引き取らされた、という話や、同じく、たまねぎを着臭させ、それを使って作った弁当 一万個分を弁償させられた、という悲劇を、当事者から聞いたことがあります。
 
たまねぎ、あんこ、チョコレート、バター、ラードなどは、スチレンモノマーやMMAなどを大変よく吸収します。
 
 
このように、防蝕設計は、耐蝕性と 環境遮断性と 接着安定性のチェックだけすれば十分、というようなものではありません。
 
そういう 現場の特性を考慮しない不用意な設計は、トラブルを多発させます
(理由は、上記の通り。)
 
 
   なを、これらは全て実際にあったトラブルの事例に基づいたものです。
 
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