防蝕のお勉強(1)原理と初歩設計

防蝕のお勉強(1)

被覆防蝕には色々な素材と施工法が使われます。
・・・・・エポキシ樹脂・ビニルエステル樹脂・ポリウレタン樹脂・ポリウレア樹脂・フラン樹脂・不飽和ポリエステル樹脂・アクリル樹脂・ポリ塩化ビニル・ポリエチレン・フッ素樹脂・シリコン樹脂・フェノール樹脂・・・・・FRP仕様・フレークライニング・煉瓦タイル貼り・スプレー施工・ピグライニング・・・・ (ライニングの名前 参照)
 
 
ゴチャゴチャあっても、原理は一つ。
 
   (雨に備えて)傘を差す。・・・防蝕ライニングの原理はたったそれだけです。
 
屋外の自転車にビニールシートを被せるのも、倉庫に屋根をつけるのも、防蝕原理において、樹脂ライニングや塗装と 本質的な違いはありません。
このように、なにかを覆せて防蝕することを、被覆防蝕といいます
 
覆せる膜を防蝕膜といい、被せられるほうを、下地(シタジ)と言う習わしです。

キーワード 1 防蝕膜は剥れたら終り

防蝕膜は下地にしっかり接着させてください。膜材料をいきなり下地に塗るか、あるいは接着プライマーを介して接着するか、どちらにしてもピッタリ接着させましょう。
 
接着させることによって、防蝕膜と下地の間に 水や腐蝕性物質が浸入するのを防ぐことが出来ます。
そしてもう一つ、接着することによって 膜が補強される という効果が生じます。
薄い塗膜がハンマーの打撃にも耐えられるのは そのおかげなのです。
 
塗膜が下地を守っている ということだけに気をとられてはいけません。
下地も 塗膜を守っているんです。 (これをカミさん効果といいます。 )
   そして、肝要な事は、接着の強弱では無く、その継続 (つまり安定性) です。
 
・・例外・・膜と下地を不用意に接着させてはいけないケース
(膜を支える役割を期待されている)下地に、“ヒビ割れがあり、かつその幅が経時変化するという場合・・普通の接着ライニングをすると、(下地のヒビと同じ箇所で)ライニングにもヒビが入ります
 
厚く頑丈なFRP層 ⇒

PE-FRP接着剤層 ⇒

発泡ポリエチレン層 ⇒

RC-PE接着剤層 ⇒
膜と下地を接着させないライニング方式なら共割れは防げます。
この場合、膜と下地の一体化は、(適当に間隔を空けてアンカーを打ち込んで行います。(どんな硬い膜でも、多少の伸び縮みは出来ますから、)“このアンカー間隔でヒビ幅の変動を吸収する”という考え方です。 この方法はアンカーライニングあるいはルースライニングと呼称されます。
ルースライニング方式は、カミさん効果が働かないので、膜には自立性が必要です。
だから通常5mm厚以上の頑丈なFRP膜が使われます・・が・・剛直性が不可欠というわけ では無く、ゴムのように柔軟なシートでもかまいません。
ルースにしないで、あくまで接着にこだわる耐クラックライニングもあります。
下図のように中間伸縮層を設けて、そこにヒビ幅の変動を逃がす、という考え方です。
(技術の細かい説明はクラックに対応した防蝕ライニング を参照して下さい)

接着型 耐クラック仕様の1例・・(弊社・ポリバックライニングの図)
下地に不測のひび割れが入っても、防水や防蝕機能が保全されます

キーワード 2

・被覆防蝕には、耐蝕性・防蝕性・接着安定性という3要素が必要です。
膜材料に必要な性質は耐蝕性と防蝕性です。
“膜材が使用環境で損傷しない”という性質を表す言葉が“耐蝕性”です。
下地を腐蝕させる物質を“透過させない”(あるいは透過させるという性質を表す言葉が防蝕性”あるいは“環境遮断性”です。
ご注意・・劣化や透過には多数の要因が複雑に絡み、その結果である劣化の様相も複雑です。だから、実用的な、統一された試験方法はありません。その意味で、JIS等の単純化した試験方法によって得られた数値を熱膨張率や弾性率のような物性値と解釈すると、しばしば現実と合わなくなります。こういうデータを利用する場合は、(慣れないと、難しいでしょうけど・・)・・・データの意味を現実の状況との対比で解釈する必要があります。
 
 
 
防蝕膜

接着プライマー
 

は下地
 
接着プライマーに必要な性質は
防蝕膜と接着し続け
下地と接着し続けることです
(両方必要です)
被覆防蝕の原理と設計法
被覆防蝕には色々な素材と施工法が使われます。
 
(被覆防蝕の模式図)
もし耐蝕性が不十分だと、短期間で膜がボロボロに崩れていきます
溶剤による劣化(ソルベントクラック)
環境遮断性が不十分だと、(膜を透過した環境物質の作用で)短期間で下地の腐蝕やブリスターが発生します。(通常、結果として、接着もダメージを受けるからです。)
ブリスターとは、火ぶくれのようなブツブツがたくさんできる現象であり、内容物であるガスや液が膜を透過して、裏側からそれを押し上げることによって、生じます。厚膜のライニングの場合は、しばしば、大きな“浮き”や“剥れ”という形になります。
 
接着安定性が不十分だと、短期間で剥がれます。(説明は不要でしょう)
(接着安定性を損ねる要因はたくさんあります。下地処理の不備や上記の“透過物質によるダメージ”も、要因の一つです。)
以上がが(各要素に対応した)被覆劣化の“通常のパターン”です。
(このように、劣化パターンを見れば、どの要素が悪かったのかが分かりますので、それによって、なにをどう改善すべきか、対策がたてられます。
 
       以上、3要素が必要だ という理由はご理解いただけたでしょうか。

次は3要素の確保の仕方(つまり、防蝕仕様の作り方)です。

耐蝕性

耐蝕性は、使用環境に膜材料をさらしておけば、確かめられますが、有難いことにそういった手間と根気の要る地味なデータは、世界中の無数の技術屋さん達がコツコツと蓄積して、たくさんの耐蝕表や耐蝕データブックの形にして、公開してくれています。 耐蝕表で○のついている材料を選べば、耐蝕性のトラブルは防げます。(資料の集め方 参照)
 

防蝕性(環境遮断性)

防蝕性(環境遮断性)は、現実の塗膜を使って透過実験をすれば、ある程度分るのですが、耐蝕性と比べ、はるかに多くの要因が関与する複雑な現象なので、実際の使用条件と正確に対応するような実験条件を設定する事が難しい上に、(例え単純な条件設定にしたとしても)実験そのものがお手軽ではないので、残念ながら耐蝕表の様な公開データはありません。
(つまり、“信用するに足る”かつ、“普遍性がある”防蝕性能評価データは無い、ということです。
JISなんかに載っている評価試験法は、やり方を見れば分る通り、過度に単純化した、一面的な評価法ですから、あの結果を、何処でも成り立つ“普遍的な性能”と解釈してはいけません。
多くの材料メーカーが、そういう解釈で材料販売をしていますが、「彼らは自分で実際に責任施工
をしてきた者では無いし、施工結果に責任を取るわけでも無い。」・・という事には留意が必要です。)
 
   しかし、ともあれ、大抵の場合、そのデータは、無くても不自由しません
   なぜか? ・・・ 膜厚を厚くすれば解決する からです。
防蝕膜の遮断能力は、アバウト膜厚の二乗に比例します。だから、遮断性能を2倍にしたいと思えば、厚さを√2倍にすればいいのです。目安としては、経験上どんな防蝕材も、一般用途なら1mm以上の厚さで施工すれば、防蝕性能が不足することはありません。
要するに・・遮断性能が心配なら・・⇒厚くすればいいのです。
 

接着安定性

これは、さらにたくさんのファジーな要因が複雑に複合した現象なので、(加えて、自分自身が、“よく分っていない”と感じているので・・・)手短かな説明は出来ません。
「接着安定性は、真面目に、汗をかく事によって生まれる。」
と適当に誤魔化しておきます。 (接着剥離 下地処理関連のページを参照して下さい。)
        現実問題として重要なポイントは、次の二つです。
   接着安定性を確保するため、*下地処理をきちんとやってください。
   そして、 *適切な接着プライマーを選んで使ってください。
 

用語の説明

*下地処理とは・・・・・・・
1 下地の錆や汚れ、水分、付着物を取り除いてきれいな表面を出すこと。(世間では、ケレンと言い習わされています。)
(鉄やコンクリート下地には、通常、この方法を使います。)
2 或いは薬剤等を使って下地表面を接着しやすいように変質させること。(表面改質ともいう。SUS、ポリエチレン、アルミ、チタン等、通常、ケレンだけでは接着出来ない対象に用います。)
 
*接着プライマーとは・・・
防蝕材が 下地にうまく接着しない時は、接着の役割を 別の材料に分担させます。それが、接着プライマーです。
(接着や下地処理のもう少し詳しい説明は“下地処理は何のために行うのか”と“防蝕ライニングの接着技法” を参照して下さい)
以上が3要素の確保の仕方です。
 
では、具体的にコンクリート槽を20%塩酸が入れられるように防蝕設計してみましょう。

先ず、耐蝕データを調べて、材料を選びます。(耐蝕設計)
塩酸20%に対する耐蝕性
評価
ビス系不飽和ポリエステル
イソ系不飽和ポリエステル
ビニルエステル
フラン
塩化ビニル
ゴム
ポリエチレン
次は、どうやって接着安定性を確保するかです。(接着設計

   下地処理・・・グラインダーで脆弱な表面を削って取り除きましょう。
   接着プライマーは・・・もし手に入るなら、信用あるメーカー(メーカーの意味ではありません。)の物を使えばOKです。(手に入らないなら、お気の毒ですが弊社のファンデーション#123か、#123LLRを買って塗ってください。)
 
以上で設計は終りです。あとは下地処理⇒プライマー⇒FRPの順に施工し、硬化が完了すれば塩酸を入れてもOKです。
 
下地が木でも鉄でも同様に行います。 蛇足ながら、耐蝕データ表で○のついていた薬品なら、塩酸の他何でも入れられます。)
 
・・・・・これで、お勉強は(一応)終りです・・・・・
 
   あなたはもう 被覆防蝕基本原理設計法をマスターされました。
自信を持って実技を練習して、設備を防蝕し、我々防蝕屋を失業させてください。
特別な物を除き、施工に大した技能は要りません。誰でも出来ます
 
尚、付加えると、下水や汚水、工場廃水、洗剤、消毒剤、海水等の、日常目に触れる対象物質なら、耐蝕性のチェックもほとんど不要です
そんな日常的物質で劣化するような重防蝕材なんて、世の中にはありませんのでそんな用途なら、市販の何を使っても同じです
 
それを加味してもう一度設計法をまとめると、次のように簡略化されます。
 
日常的対象なら・・
「どんな樹脂を選ぶか、厚みや膜構造をどうするか」等という事は一切考えず、
その辺にある適当な防蝕材料を厚く塗るだけで良い。

それは次のように言い換える事も出来ます。
何かひとつの材料と、使い方をマスターして、相手構わず、
ワンパターンのやり方を繰り返しても、構わない。
例えば、ビニルエステルFRPライニングだけ、或いはエポキシレジンモルタルだけ覚えて、何に対してもそれを適用するというやり方でも構わない、という事です。)
 
つまり、廃液槽や工場床や汚水下水槽程度の防蝕施工なら、樹脂の物性を知らなくても、腐蝕や防蝕の小理屈を知らなくても、設計法知らなくても困らないという事です。

その意味で、(日常的)重防蝕は、だれでもできる のです。
(ただし、くれぐれも、下地処理だけは、お忘れなく。)
 
   そんな単純なワンパターンに飽き足らない 凝り性症候群の患者の方は
 
 
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