層間剥離

ライニングは(プライマー、中塗り、上塗り等のように)何層かに分けて施工するのが普通です。
また、修理の場合には、必ず、旧膜との重ね合わせ部分が出来ます。
 
そういった時、問題になるのが各層の間の接着です。
うまく、接着すればいいのですが、しばしば剥離のトラブルがおこります。
トラブルパターンは様々ですが、以下は、その中で頻度の高いもののメカニズム、防ぎ方の説明です。

[Ⅰ]部分修理時のトラブル

   何時でも何処でも通用する結論・・・●改修のポイントは、目荒しです
          (表面をサンダーで削ったりサンドペーパーでこすることです。)
 
エポキシであれ、不飽和ポリエステルであれ、MMAであれ、ウレタンであれ、古いものの上に新しい樹脂をかぶせるとき最低限目荒しをしないといけません
この行為は、旧塗膜上の汚れを除去することと、旧塗膜表面に細かい凹凸をつけて、接着力を増やすことを目的としたものです。
         この下地処理を手抜すると、必ず剥がれると思ってください。
本当に古い塗膜の場合は、手抜きしなくても剥がれることがあるくらいですから。)

[Ⅱ]不飽和ポリエステルの色々なトラブル (ビニルエステルでも同じです)

   ★エポキシ樹脂の上に不飽和ポリエステル樹脂直接塗るのはキケンです!
 
エポキシの上に、不飽和ポリエステルやビニルエステルを塗ると、接着界面で、硬化不良を起こします。
 
<メカニズム>
微量の残留アミンによって、硬化助剤のコバルトイオンが捕捉され、働きを失う。
・・・のではないかと推定されます。(不飽和ポリエステルの解説・参照)

<但し、例外もあります>

本当のメカニズムは、もっと複雑かもしれません。
念のため、いろいろなタイプのエポキシ樹脂を使ってテストしたところ、トラブルを起こさないタイプや、ケースがある・・・ということがわかりました。
それらの結果を総合すると、上記推定のように単純化して断定することには、ためらいがありますが、市販の樹脂をそのまま使う限りにおいては、ほぼ100%そうなりますので、あえてトラブルになると決め付けました。

<対策>

エポキシの上に、不飽和ポリエステルをかぶせるときは、一度、ウレタンプライマーを塗布してからにしてください。(不飽和ポリエステルの解説・参照)
このように、直接接合に問題があるとき、別のものを介して接合する“バインダーコート”or“プライマー”という考え方は、いろいろなケースで役に立ちます。工夫してください。

<逆は、問題なし>

不飽和ポリエステルの上にエポキシをかぶせるのは、問題ありません。
ただし、・・・
今度は、別の問題でトラブルことがあります。
★ワックスによるトラブルと、ノンワックスによるトラブルです。
 
不飽和ポリエステルのFRPの仕上げにパラフィンワックスを加えると、これが、仕上がり表面に浮いてくることは、樹脂の解説に入れました。
だから、この上に別の物を塗るときは、サンダー掛けでワックスを除去しないと、剥がれます。
だからといって・・・ノンワックスで仕上げて、その上に別の塗料を塗る・・・というのは、もっといけません。
ノンワックスで仕上げたFRP表面は、数ミクロンの深さまで、硬化不良を起こしています。(スチレンモノマーが蒸発して、見た目固まったように見えるだけで、実際は固まっておらず、“弱境界層”を形成しています。だから“豆腐にかすがい現象”で剥れます。)
だから、必ず、一度ワックス入りで仕上げて、目荒しでワックスを落としてから塗るという手順を守ってください。
ノンワックスの上に、塗ってよいのは、不飽和ポリエステルとビニルエステルだけです
(この場合だけは、塗り重ね材料に混在した硬化剤が、硬化不良部を硬化させるので、問題は生じません。)

<こういう場合は問題ありません>

型抜きしたFRPは、ノンワックスであっても硬化不良には、なっていません。
だから、そのまま、上にコーティングできます。
しかし、目荒しはした方が良いでしょう。(離型剤が付着している可能性もありますから)
 
   (普通の硬化システムなら・・)水は不飽和ポリエステル樹脂の硬化反応を阻害します
 
不飽和ポリエステルは、固まる前に水に濡れると、硬化不良を起こします
(そして水を吸収します。)一見、何の問題もなく、固まったように見えても(それが、最もタチが悪いのですが)諸々の物性は、ボロボロに悪化しています。
それだけでなく、この上に塗った上塗りや、別の塗料も剥がれます。
だから、“固まるまでに水に濡れる”という可能性をつぶしておかないと、トラブル処理に振りまわされます。
 
屋外なら、雨が降りそうになったら、早めにキッパリ仕事を中止すべきです
午後三時以降は、(その時間で作業を打ち切るとかいった)夜間の結露を想定した作業をしないといけません。
もし、不幸にして濡らしてしまった場合
硬化不良部は、全て削り取るのが、修理の原則ですが、ベタベタした硬化不良部の削り取りは、容易ではありません
 
 
                                                                                           〔閑話休題〕
     市中に出回っている仕様書には、(誰が決めたのか知りませんが)ハンで押したように
                                   “湿度80%以上では、作業しないこと!
という項目が入れてあります。 しかし、この数字に理論的な根拠はありません
 
   空気中の湿度が問題なのではなく作業面の結露が問題なのですから・・
結露している、或いは、結露する状況になった対象物には施工しないこと。

                                                                                  ・・・と書くのが、正しい表現です。
例えば、気温25℃で相対湿度が60%の時、もし、施工面の温度が15℃であったら 結露が生じ 樹脂が吸水しますから、だから⇒施工してはいけません。
逆に、湿度が85%でも、90%でも、施工面の温度が気温と同じか それより高ければ、施工しても何の問題も起りません
だから、この問題に関しては、ロボットみたいにマニュアル(それも、できの良くない)に、機械的に従わないで、理由を理解して合理的に判断すべきです。
なれた職人は 作業中 結露を瞬時に察知します。こちらに従うほうが余程確実です。
(結露すると、塗りつけた瞬間にかすかに樹脂の色が白っぽく変わります。(すぐ消えますが・・・)経験のない人には 見えなくても、チャンとした職人が ソレを見逃すはずはありません。

[Ⅲ]エポキシ樹脂の場合

“エポキシ樹脂の上に、エポキシ樹脂を重ねたら剥がれた。”というトラブルはよく起こります。しかし、そのメカニズムとなると一筋縄ではいきません。(エポキシ樹脂の解説)で触れたように、この材料には天文学的な数のバリエーションがあるため、一般論が成り立たないからです。
しかし、市販の塗料や床材や防蝕材は、大半似たような材料を使っていますので、そんなタイプを想定して一般的な注意を記します。
 
●まず、(データをどう解釈するか)の飲料水試験の項を参照にしてください。特に“試験に不合格になる方法”のところをよく読んでください。その状態で塗り重ねると、層間剥離も起こしやすいという傾向があります。(エポキシの場合、バリエーションの多さ故に、100%の断定はできません。・・・かといって、“簡単に合格するする方法”のやり方で施工する方が良い!というわけにもいきません。あのやり方は、“場合によっては下地に対する接着力が低下する”というデメリットとセットになっているからです。)
だから、低温や、湿潤な状態で施工した場合は、念のため、目荒しをしてから、次の工程に移る・・・という用心をする方が無難です。
(剥離し易い状態か否かは目で見て判定できないのが普通ですが、炭酸ガスの影響を強く受けたり、吸水が多いと表面がツヤ消し状になります。・・・そんな時は当然、目荒しすべきです。)
 
●もう一つの問題・・・★(1)塗り重ね時期
SOTEC LLprimer を参照して下さい)
一層目と二層目の時間が空き過ぎる事によって、層間剥離が起こることもあります。
とくに、真夏の屋外の施工で起こりやすい問題です。
 
●もう一つの問題・・・★(2)アミンのブリード
樹脂と硬化剤の組み合わせによっては、硬化反応の過程で、アミンの一部が表面に浮いてくることがあり、それが次の層との接着を阻害することがあります
樹脂とアミンの相溶性が悪いとき、あるいは、アミンを過剰に加えたときに起こりやすい問題です。
大抵、表面(だけ)が少し、ベタついたり、ツヤ消し状になります。
そのまま塗り重ねすると、必ず層間剥離します。
 
以上、もし、そうなった場合
どんなケースであれ、目荒しをして、次の工程に移るということを、解決策の基本と考えてください。
 
サンダー掛けには、少なくとも、「下地表面の付着物も劣化層も、一切合財、全部削り取ってしまい、新鮮な表面を露出させる」という有意義な効果があります。
 
(但し、厳密に言えば“薬品に浸漬された状態で、長期間良好な接着状態を保たせる手段”  という観点からは、“目荒し”には問題点があります。無条件でベストの手段である、とは思わないで下さい。例えば、液状の弱境界層は、サンダー掛けでは取れませんし、対象物によっては、それによって弱境界層を作ってしまう事があります。)
 
サンダー掛け以外にも、有効な下地処理法は色々あります。⇒ 一例
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