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コンクリート床

(1) コンクリート床

ブタ小屋、牛小屋、鶏小屋、工場床、通路、その他、その他無数の床が、ポルトランドセメントのコンクリートで打設されています。
 
床の材質がコンクリートである”ということが、どんな意味をもつのか、豚舎を例にとって点検してみます。
理想的なコンクリートの圧縮強度は、1トンを超えるそうですが、一般の土間コンクリートの圧縮強度はせいぜい、250kg/cm2程度です。

コンクリートを練る水を増やせば増やすほど、コンクリート中に空隙が増え、それによって強度が下がる・・・というメカニズムです。
(逆に、強度が低下したコンクリートは、空隙が多くなっています。)
 
さて、この上でブタを飼うと、当然汚れます。
ブタは周囲のアンモニア濃度が僅か5PPMを超えた程度で餌効率が低下してくると言われているくらい、本来はきれい好きな動物なので、飼う人たちはせっせと掃除し、水洗いをします。
それを毎日続けていると、コンクリート表面の水溶性アルカリ成分が溶出して次第に中性化していき、表面の微細な空隙も増えてきて、汚物がからみつきやすくなってきます。
雨ざらしのコンクリートの劣化機構とその防蝕法 参照)
 
コンクリートが強アルカリ性である間は、微生物もあまり繁殖できませんが、中性化の進行とともに、その表面空隙は、汚物とバイキンの溜まり場になってゆきます。
 
かくして、更に間断なく消毒と水洗をしなければならない状況が生み出されます。
(そういう事情は、牛舎でも鶏舎でも或いは食品加工場でも大同小異です。)
それによってコンクリート強度はさらに弱くなり、どんどん摩滅し、腐蝕し、凹凸になり、グリ石が出てきて・・・という順に、劣化損傷が加速してきます。
要するに悪循環です。
表面が荒れるに従って、掃除の時間と手間が増えてきます。
 
そして、ついに我慢の限界がきて、その上に新しいコンクリートを打設する・・・
という事態になります・・が、新旧コンクリートの接合はコールドジョイントなので、新しく打ったコンクリートは、古いものと肌別れし、その隙間に汚れが入り、割れて端部が欠落し、余計汚くなるというパターンになりがちです。
 
水を使わない事務所や工場床では、そういう問題は生じませんが、ホコリの発生が問題になります。
(普通のコンクリートは、どういうわけか、とにかくやたらと粉塵を発生させます。)
 
だから、クリーンルームに裸のコンクリートはタブーです。
 
・・普通のコンクリート床にはそんな問題が有ります・・そこで・・
 

表面強化法

   セメントを使って、コンクリートの表面を緻密で高強度にする方法があります。
 
まず、コンクリートを打設します。
しばらくすると、半硬化状態になり、水がブリードしてきます。
そこに、セメントの粉をばら撒き、金ゴテで押さえます。
 
そうすると、このコンクリートの表面は、(相対的に水が少なくなるため、)硬くて、緻密になります
セメントは、練る水が少なくなればなる程、緻密さと強度が増します
 
弁柄や酸化クロムなどの着色顔料を一緒にばら撒いてやれば、色つきの床に変わります。普通のセメントの代わりに、ホワイトセメント(鉄分などの着色成分の少ないセメント)を使えば、色が鮮やかになります。
このやり方は少ない材料費で、耐磨耗性のよい床ができますので、機械工場の床などで、WAXがけを前提として、よく使われます。
   この色付セメント粉は、建材メーカーやセメントメーカーが製品化して市販しています。
 
   この方法の欠点は
①後で、ひび割れしやすいこと
②10~20mmの深さで、下部のコンクリートから剥がれる傾向があることです。
  (改修する時、全体を除去すべきかどうか、悩ましい事になります。
③所詮セメントですから、耐触性が弱いので、化学工場等には適しません。
長所は、もちろん安いこと。
 

耐酸セメント・耐火セメント

コンクリートは酸に弱い・・・というのは、常識ですが、酸に強いのもあります
 
アルミナセメントや水ガラス系セメント等がそれです。強酸に耐えます
これらの仲間は、耐火材として製鉄所の炉やガラス溶鉱炉煙突の内面ライニング等にも使われています。(というより、それらがメジャーな用途です)
 
大ユーザーでもある旭硝子㈱
ユーザーではないが、メーカーである東和耐火工業㈱
あるいは、ヘキスト㈱等、いろいろなメーカーが製品を販売しています。
骨材配合などに各社いろいろなノウハウがあるようです。
耐火材に関しては、私達はシロートですから、聞かれてもお答え出来ません。東和耐火工業の山本啓氏にお問合せ下さい。 ・・・スミマセン・・私メの碁弟子です。本人は碁と自惚れているようですが。)
         耐酸ライニング材としては、“ポーラスであること”が、欠点です。
   しかし耐火材としては、それは(断熱性を高める)長所なんだそうです。(山本氏談)
 

ポリマーセメント

ヤカン等の容器
普通のセメントモルタルに樹脂(これをポリマーと表現している)を加えて練ったものです。
アクリルエマルジョン、SBRエマルジョン、エポキシエマルジョン等いろいろなものが使われますが、目的はほぼ、どれも同じです。
加えることにより、硬化物は緻密で水を通しにくくなり、付着性が良くなります

その他、流動性の改変や、薄塗りしたときの保水性の向上を目的として使います。
・・我々の実験では・・という注釈付ですが耐蝕性もかなり良くなりますので、打ちっぱなし床で仕上げるなら、その時にせめて表層だけでもポリマーセメントを流しておく方が良いんじゃないかと思います。 効果に比べれば、コスト増はゴミみたいなものです。
(もちろん、この上に塗装仕上げもできます。)
 
このような、セメント添加用ポリマーは、大日本インキ工業㈱、旭電化㈱、JSR等、多くの化学メーカー、合成ゴムメーカー等が作っています。
それをセメントメーカーや、建材商社等が(しばしば自社ブランドで)販売しています。
 
その他、”左官に頼らず、床を平滑に仕上げられる”というのがウリの“セルフレべリングセメント”も、ポリマーセメントです。
これは、ポリマーを減水材として機能させ、(或いは減水剤を併用して、)かつ、水を増やす、(あるいは減らさない)という方法で、流動性を極度に高めたものです。
このような用途のものは、粉体でも売られています。
(例へば:モビニール、モディパー・・・ヘキスト合成㈱)
 

ポリマーセメントの鋼材防蝕への応用

ポリマーセメントの流動性防錆機能を利用して、鋼製の柱や柵の根元を防蝕することができます。
上図左側のようにコンクリート床に直接鋼材を突き刺したような構造は、周辺に水が滞留し易いので、根元がすぐ腐蝕します。そこで、右側のように、安い塩ビパイプなどを一緒に埋め込んでおき、その隙間にヤカンなどを使って、ポリマーセメントを流し込めば、寿命は大幅に伸びます。
セメントは強力な防錆剤です
 
 
   (ことのついでに・・・) セメント配合物に関する紛らわしい用語
 
“ポリマー含浸コンクリート”
というのは、硬化したコンクリートに樹脂を含浸させたものです。
 
“樹脂セメント    レジンコンクリート    レジンモルタル    レジモル”
というのは、樹脂に 砂等の骨材を混ぜたものです。全て同じ物です。
(其の樹脂が エポキシ樹脂であれば、エポキシモルタルと言います)
 
   これらを、(セメントに樹脂を混合した)ポリマーセメントと混同なさらないようご注意ください。
 
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