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塗装とライニング

塗装とライニング(とメッキ)の違い

「被覆防蝕」という視点で見れば、塗装とライニングとメッキにハッキリした境界はありませんが、施工技術や背景には、差異があります。

【塗装】

“paint”“絵画”とも訳されるように、“塗装”というのは元々、絵の技法や材料がルーツです
ですから、塗料や刷毛やスプレーといった塗装用具はそのまま絵画の用具でもあります。
“絵描き”の感覚は、現在も塗装業界に遍く引き継がれているようです。
 
ところで、油絵は、パテ状の塗料をゴテゴテと、左官屋のように塗る、例外的手法の絵画ですが、この塗り方は、同じ様に無溶剤の材料を使用する樹脂ライニングのそれとソックリです。
(逆に、左官が、コテで、漆喰壁に立体的な絵を描く、地方が 有るようです。その意味で、これらは兄弟なのかもしれません。)
 
さて、防蝕塗料のルーツは、植物油や魚油を使った“油性ペイント”です。
鉄製品を錆から守るという目的で、使用されました。
この、“油性ペイント”は顔料を植物油で練ったものですが、これは油絵の具そのものです。
   さて、(パテ状の材料を使う)油絵という例外はありますが、塗料というのは「薄塗り」「着色」が基本です。

見た目がきれいな表面を作るには、それが最も効果的だからです。
薄塗りするために、溶剤や水を混ぜて“薄め”ます。
だから塗料業界では、しばしば、“塗料化する”という用語が“溶剤で薄めて低粘度化する” とほぼ同義で使われます。
(それ故、消泡、レベリング、顔料分散等々のテクニックや塗布方法も、全てそれを前提に作られています。)
   それはそれで、長い歴史を持つ、完成度が高い技術体系ですが、防蝕ライニングの世界にそれを惰性で持ち込むと、いろいろ厄介な問題も起きます。
 

【防蝕ライニング】

防蝕ライニングは、主として化学工場の反応槽、薬品貯留タンク、ダクト等の諸設備を腐食性薬液や腐食性ガスから守る、というニーズに対応した技術です。
 
そういった激しい腐食環境に晒された構造物を、硫黄、鉛、磁器煉瓦、ガラス、カーボンブロック、耐酸セメント、アスファルト、等耐蝕材被覆して、守る、というのがルーツです。
ゴムシートや塩ビシート等を接着剤で貼り付けるシートライニングやエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を塗りつける樹脂ライニング等があります。
造膜法も、熱熔融、焼き固め、混練こて塗り、煉瓦積み、吹きつけ、熔接等々、多様な技法がトライされ続けています。(ライニングの名前 参照)
 
酸、アルカリ、溶剤、酸化剤、高温、低温、等々あらゆる条件が対象であり、下地も鉄、コンクリート、石材、木材、ステンレス、プラスチックというように、あらゆる構造材が対象です。
    過酷な環境で使われる事が多いため、しばしば、頑丈な膜が必要です
(そのため、塗装が大抵0.01mm単位であるのに対し、樹脂ライニングは、大抵mm単位の厚さになります。)
こういう、厚くて頑丈な膜を、対象物に接着させると、接着境界に厚さと硬さに比例したストレスが発生しますので、(厚さが、塗装の100倍のライニングでは、)塗装の100倍の接着力が必要です。
そのため、塗装ではあまり注意を払われない、接着技術が大きな意味を持ってきます。
その逆に、塗装で重視される、色や外観には、(“性能上、どうでもいい事”、という理由で)しばしば関心すら持たれません
 
塗装屋さんが防蝕ライニングに手を出して失敗するのや、防蝕ライニング屋が塗装に手を出して、もめるのは、大抵そういった点です。
 

【メッキ】

金や亜鉛やクロムやニッケル等の金属を被覆する普通の方法はメッキです。
この技術は装身具等の金属加工技術の一つとして、行われてきましたが、金メッキや銀メッキ等はそのまま防蝕被覆として機能します。
亜鉛メッキはほぼ純然たる防蝕被覆ですが、これは犠牲陽極となって鉄を防蝕します。
メッキの造膜法としては電気鍍金法が一番ポピュラーですが、溶けた金属浴の中に鋼材をドブ浸けする熔融メッキや、酸化還元反応を利用する無電解メッキ等があります。
メッキとは技法が異なりますが、異種金属板を重ねて圧着させるクラッドという技法もあります。
あるいは後述する溶射の後、加熱して、溶射金属を母材表面に拡散させ、薄い合金層を形成させる技法もあります。
 

【境界領域】

上記のような仕事は何れも、それぞれが全く別々の業界を形成し、独自の技術を発展させてきましたが、それぞれが領域を広げてゆけば、必然的にオーバーラップする部分も出てきます。
あるいは、どの業界にも分類されにくい造膜技術も次々と生まれてきます。
(元々歴史的偶然で分類されていただけですから、分類する必要は無いのかもしれません。)
目的は防蝕だけですか?参照)
オーバーラップの実例をいくつか紹介します。
 
実例アラカルト
ジンクリッチペイント・・・これは塗料の中に亜鉛の粉末を大量充填した物であり、それを鋼材に直接塗布する事によって亜鉛メッキの機能をもたせようとした物です。バインダーとしてはエポキシ樹脂やシリケートセメント等が使われます。通常、その上に普通の塗装を被せます。
現在の自動車は、亜鉛メッキをして、その上に普通の塗装を被せるのが主流のようです。
溶射・・・高温で亜鉛を熔かしながら、塗装のようにスプレーする、亜鉛溶射という方法もあります。 ステンレスや銅やアルミやステライトやタングステン等の金属や、アルミナのようなセラミックや、ポリエチレンやポリプロピレンのようなプラスチックも、溶射出来ます。
複数の材料を、同時に溶射して混ぜ合わせ、合金のようにする技法もあります。
蒸着・・・減圧タンクの中で、金属等を高温で蒸発させ、対象物表面に付着させる技術です。
網戸の網の片面だけにアルミやニッケルを蒸着させ、外から中は(光が反射して)見え難いが中から外は見やすいようにした製品等が、身近にあります。
キャスタブル・・・煙突の中や溶鉱炉の中は、アルミナセメントに代表される耐火セメントを厚く吹きつけたり、耐火煉瓦を積んで防蝕します。こういった材料は化学工場の耐酸耐熱被覆にも転用出来ます。(但し、水比を小さく抑えないと、ポーラスになって、遮断性が不完全になります。)
 
 
以上の様に、どんな業界のどんな材料であれ、あらゆる膜は、何らかの防蝕機能をもっており、あらゆる防蝕膜は全て、色々な、“防蝕以外の機能”も持っていますので、他分野との境界がハッキリしないのは当然です。
その意味で、防蝕被覆を、(機能や 形や 技法や 性質や 性能などで)単純に分類するのはは困難です。
(また、全ての“分類”について言えることでしょうが、分類は、“木を見て森を見ない”という弊害をもたらす一面があります。“分類したとたんに、他の視点を失ってしまう”という弊害です。)
 
・・とは言っても、被覆防蝕から“防蝕”という語を外せば、「被覆法」あるいは造膜法という言葉で一括りになり、その場合は、LSIや液晶画面やウエディングドレスや厚化粧、かつら、煎餅、もんじゃ焼き、テーブルクロスにゴキブリホイホイやサロンパスまで含まれてしまうので、話の範囲を限定するには、適当に分類したり、縄張りを作ったりする事が必要かもしれません。
塗装とライニングとメッキは“違う”という具合に・・
 
 
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